teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]


新着順:2/13 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

Chimera-blood

 投稿者:十色 彩  投稿日:2008年 7月31日(木)13時10分50秒
  通報 返信・引用
  「イアラ、見えてきたぜ!」
すっかりいつもの調子に戻ったらしい由は前に向かって指を指す。今まで空を見ていた私は視線の向きを由が指を指している位置へとずらした。
「わぁ・・・・」
見えたのは花が咲き乱れる小さな街、【天使の庭~エンジェルガーデン~】。明らかに人の数よりも花が多い事が遠くからでも分かる。
「祭りとかやってねぇかなー?」
「まだ飲む気?」
呆れ半分で答えてやると由は「酒はこの世で必要不可欠な・・・・」等と酒について語りだす。「はいはい」と軽く流しながら聞いていると、港にそろそろ着くようで、アナウンスが入る。
まだ語っている由を引きずりながら荷物の整理をし、船を下りる。その頃には由のとてつもなく長い話は終わっていた。
「よっしゃ、まずは宿探しだなー」
私はそう言いながら歩き始めている由の後ろに着いて歩く。すると風に乗って甘い香りが漂ってくる。ふと周りを見てみると、店の大半が花屋で、ほとんどの店の前にはワンピースにエプロン姿の女の人が花を入れたバスケットを持っていた。
「あの、よかったら・・・・どうぞ」
花の香りに誘われるようにして花を見ていた私は後ろに人が居たことに驚いた。
《キメラ》と呼ばれる人々は、例外なく五感が鋭いのだ。それなのに気がつかなかった。
(それほどまでに集中して花を見ていたのか、それとも・・・)
そう考えながら後ろを振り向くと、二十歳くらいの綺麗な女の人が赤い花を渡してくれた。
「ありがとうございます・・・」
そう答えると女の人はニッコリと笑う。
「うちの店の花は気に入ってもらえたかしら?」
(・・・いや、考えすぎだ)
こんなに優しい笑顔がつくれる人が裏の仕事をしている訳が無い。自分の中で答えを出す。
「はい。とてもいい香りですね、この花」
さっきもらったばかりの花の香りを嗅ぎながら答える。
「よかった、気に入ってもらえて」
女の人は「フフッ」と笑う。
「おーい、イアラ~?」
いきなり自分を呼ぶ声がする。後ろを見ると由がこっちへ走ってきていた。
「どうしたの?」
私の目の前まできた由は深刻な顔をする。
「宿が・・・・高い!」
「は?ここに来る前にお金稼いだでしょ?」
私のいた町で自分の持っている、いらないものを全部売ってきたのだ。保存状態がよかっただとかでかなりの高額になったハズだ。
「それがさぁ、船で使っちまった・・・・グハッ!」
頭をボリボリと掻きながら「ハハ」と笑う由に殺意が芽生えたが、周りに人がいるので一発ぶん殴るだけで勘弁してやる。
「あの・・・・」
その様子を見ていた女の人が止めに入る。そして、ニコリと微笑んで
「よかったら、私の家に泊まっていきませんか?」

          女の人の背中に天使の羽が見えた瞬間だった。
 
 
》記事一覧表示

新着順:2/13 《前のページ | 次のページ》
/13